2016-04-21
「以前、岩波文庫5千冊を◯◯大学に寄贈したことがあるのですがまだそれぐらいの量はあって、今日は哲学の歴史という本と全集をちょっと整理したいのですが。」
というお問合せ。
岩波文庫5千冊といえば個人の蔵書としては相当なものです。ただし、住所をお伺いすると長時間の駐車には非常に厳しいエリア。どうやって搬出するかを思案しながら電話で更に詳しくお話を伺っていると、岩波文庫はすでに1冊もなくて、今回は『哲学の歴史』の揃いと『明治文学全集』だけを整理したいということ。
それなら搬出に30分もかかりません。「残りの岩波文庫5千冊」を買取りできると早とちりした後だけに少しだけがっかりしながらすぐに訪問させていただく約束をしました。
2階へ案内されるとびっくり仰天。
廊下一面の壁に文庫専用の棚が作り付けられており、天井の棚までギッチリと文庫本が並べられています。それも講談社学術文庫・ちくま文庫・ちくま学芸文庫・講談社文芸文庫といった人気のあるところばかり。これだけで3~4千冊はありそうです。
さらに、寝室へ通されると本来クローゼットであるべき場所が書庫に改造されていて、手前・真ん中・奥と3重のスライド棚になっています。一番奥の棚は空っぽになっていて以前は寄贈した5千冊の岩波文庫が並べられていたとのことでした。
さらにさらに、別の洋室の壁にも同じような3重スライド本棚が鎮座しており、かなりハイセンスな人文系の良書が隙間なく並べられています。
これにはため息しか出ません。すぐにでも専門的な古書店を開店できそうな蔵書です。
数年前にお亡くなりになった旦那さんがかなりの蒐集家で、出張のたびに地方の古書店めぐりをしたり、神田神保町で買い集めたものだそうです。
生前はお知り合いの本好きの方が遊びに来ると、今回の私のように口を大きく開けたまま放心状態になっていたとのことです。
先日の熊本の震災で、本の重みで家が潰れるのが怖くなったこともあり、重量のある揃いモノの一部を整理しようとしてお呼び頂いたということでした。
「地震が怖いということでしたら当店に全部買い取らせて頂けませんか?」と打診します。
当然です。これだけの本を前にしてそう言わない古本屋はいないでしょう。
ざっと見ても松尾堂の過去の最高の買取額になるのは間違いありません。
「主人の兄弟からは、できるだけ本人の名ごりを感じられるように生前のままにしておいてほしい、と言われているのであまり手を付けるわけには行かないんですよ」
とやんわりと断られてしまいました。
本人や本人の身内の人にまだそういう思いが残っている以上、これは諦めるしかありません。
それにしてもすごい・・・ ともう一度本をじっくりと拝見していると
「本当に本がお好きでいらっしゃるのですね」
と笑われてしまいました。
中央公論新社発行の『哲学の歴史』が揃いだということでしたが1巻から11巻までしかなく、
「本巻12巻で別巻が1冊あり、全部で13冊あるはずなのですがどこかに混ざっていないですか?」
と、近くの棚をさがすと、別の本の間に第12巻があるのを発見しました。これで本巻揃いです。
明治文学全集は全100巻中92冊のほぼ揃い。
この2点にしっかりとお値段をつけさせて頂きました。
他に処分にお困りになっていた本の整理を引き受け全てを車に積み込みました。
大切な方の蔵書の整理・片づけは松尾堂へおまかせ下さい。
丁重に扱わせて頂きます。
本棚に並んだままの状態で結構です。ホコリをかぶったままで大丈夫です。
箱詰め・搬出も全て当店が行いますので重たい本を動かす必要はございません。
松尾堂の出張買取をぜひご利用下さい。