2016-05-08
「遠い昔に親戚から譲り受けた源氏物語の木版画があるのですが、買取ってもらえるでしょうか?」
漠然としたご依頼の内容でしたが、お電話の声の主とのお話でなんとなく拝見してみたいという気持ちになり即日お伺いいたしました。
マンションの一室を訪問すると先ほどお電話頂いたご依頼人が迎え入れてくれました。かんたんに挨拶を申し上げた後、早速拝見することにします。
内外タイムス社が昭和30年代に発行したもので”木版画『源氏五十四帖』”と銘打たれています。源氏物語54帖の代表的な場面をそれぞれ1枚ずつB4 サイズほどの木版画にしたもので、各々和文と英文で解説が付けられています。
調べてみると50度刷りのようでかなり手の込んだ刷りものです。保存状況も良好。
まだ幼かったご依頼人のことを非常によく可愛がってくれた親戚からもらったものでこれまで大事に大事に保管してきたそうです。この親戚の方はこの木版画の作成に携わっていたことからご依頼人にプレゼントされたようです。
自分たち夫婦が亡くなってしまったらこの大切な版画が掃除屋さんに捨てられてしまうことを想像すると忍びなくなってしまい、大事にしてくれる誰かの手に渡ることを望んでお呼び頂いたとのことでした。
残念ながら末摘花、玉鬘、宇治十帖の後半が見当たらず、反対に若紫や夕顔など数枚が重複してあり、五十四帖揃いとはなりません。
また本来はあるはずの帙か箱がありません。次に欲しい方を見つけるのは難しそうに感じましたが、何となく思うところがありかなり思い切ったお値段を提示いたしました。
ご依頼人は引き取ってもらえるかどうかも半信半疑だったようで、査定額を聞いてよろこんで頂けました。
他に谷崎潤一郎訳源氏物語などの引取も引き受け、ご依頼人宅を後にしました。